選び方・比較

解体工事の現地調査で発注者が確認すること|図面と現況のそろえ方

依
依田尚人

著者・監修 ・ YDAIコンサルティング株式会社 代表

9分
目次

現地調査では、建物を見ながら施工方法を決めることより、発注者が持つ図面と現況の差を記録し、判断が必要な対象を共有することが重要です。建物、設備、外構、地中、周辺条件を同じ順序で見れば、比較条件や工程に関わる情報を集めやすくなります。発注者は、調査に参加する人、持参する資料、調査後に残す記録を先に決めます。

図面・現況・差分記録をつなぐ解体工事の現地調査全体図
図面・現況・差分記録をつなぐ解体工事の現地調査全体図

現地調査の前にそろえる資料

現地に行く前には、図面、施設情報、過去の改修記録、設備に関する資料、調査済みの資料を集めます。資料が揃っていないこと自体は珍しくありません。大切なのは、ある資料とない資料を区別し、現地で確認する項目と後で確認する項目を分けることです。資料の不足を口頭の説明で補わず、確認先と予定日を案件記録へ残します。

確認対象図面で見る点現地で見る点記録する差分
建物本体形状、区画、付属物増改築、劣化、撤去対象図面にない部位、位置の違い
設備設備名、配置、系統使用継続、切離しの必要性台帳との差、確認担当
外構と地中境界、配置、基礎の予定搬出経路、地表の状況撤去・存置の未確認事項
周辺条件敷地と出入口隣接地、通行、仮囲いの位置工程へ影響する条件

図面と施設情報を確認する

図面では、建物本体の範囲だけでなく、設備、外構、敷地境界、出入口などを確認します。現地で初めて資料を見ると、確認対象を見落としやすくなります。図面ごとに作成時期や対象範囲が異なるときは、どの資料を現況と照らすのかを決め、古い資料も差分を探すための情報として扱います。

施設情報には、現在利用している区画、停止予定の設備、保管物、引渡し条件などを含めます。発注担当だけで判断できない事項は、施設管理、利用部門、土地管理などの確認先を記録します。現地で決めることと、社内で判断することを分けておくと、調査後の記録を誰へ渡すかが明確になります。

図面・設備台帳・施設情報を現地調査前にそろえる書類の図解
図面・設備台帳・施設情報を現地調査前にそろえる書類の図解

調査済み資料の有無を確認する

石綿に関する結果や土地に関する資料など、すでに確認済みの資料がある場合は、資料名、確認日、工事範囲への影響を一覧にします。石綿の事前調査と、大気汚染防止法に基づく発注者への書面説明は元請業者が行う事項です。根拠は同法第18条の15第1項で、現行版の施行日と改正公布日は2026-07-01、確認日は2026-09-05です。e-Govの大気汚染防止法で確認できます。

発注者は、資料の内容を専門的に判定する役割と混同せず、説明を受ける日、結果を工程へ反映する日、未確認の資料の確認先を残します。土地についても、基礎撤去や掘削の予定と、土地の形質変更に関する確認を分けます。資料がないときは、対象外と判断せず、現地調査の記録に確認中の事項として追加します。

現地で確認する対象

現地では、図面に記載された対象を確認し、実際の状態と差がある箇所を残します。建物本体、設備、外構を一度にまとめて見ると、存置する対象や利用を続ける設備を見落としやすくなります。対象ごとに見る順番を決め、写真、位置、確認先を組み合わせて記録します。

建物・設備・外構を分けて見る

建物本体では、図面にある区画、屋根、付属物、搬出に関わる部分を確認します。設備では、受電設備、給排水、通信、空調などについて、撤去するもの、使用を続けるもの、確認が必要なものを分けます。外構では、フェンス、舗装、仮囲いを置く位置、敷地の出入口などを確認します。各対象を分けることで、判断する担当者も整理できます。

現地で見つけた対象をすべてその場で撤去・存置に決める必要はありません。判断が必要なものには、仮の区分と確認先を付けます。例えば、設備の停止時期が未決であれば、位置と利用部門を記録し、判断を終える予定日を置きます。発注側の調査は、施工内容を決定する作業ではなく、必要な判断を見える形にする作業です。

建物・設備・外構を別の確認順で見る現地調査の線画
建物・設備・外構を別の確認順で見る現地調査の線画

周辺・搬出・土地の条件を記録する

周辺条件では、敷地の出入口、搬出経路、隣接地に近い対象、仮囲いの鋼板パネルを置く位置などを確認します。周辺の状況を評価するためではなく、工事範囲と工程に関わる条件として記録します。現地で確認した内容は、写真だけでなく、対象名、位置、工事との関係、確認先を付けて残します。

土地側では、基礎コンクリート、杭、掘削の予定、整地後の利用計画に関わる情報を確認します。土壌汚染対策法第4条第1項では、一定規模以上の土地の形質変更をしようとする者に届出が定められています。個別の該当判断は、面積、区域指定、工事内容を伝えて都道府県の窓口や専門家へ確認します。現行版の施行日と改正公布日は2026-07-01、確認日は2026-09-05です。

調査後に残す記録

現地調査の価値は、参加者が見た内容を、比較や社内判断に使える記録へ変えることにあります。調査後に写真だけが残ると、何を確認した写真か、誰が判断する項目かが分かりません。差分、未確認事項、判断期限を一つの一覧にまとめ、次に確認する相手へ渡します。

差分と未確認事項を一覧にする

図面と現況の差分には、対象名、位置、図面上の記載、現地で確認した内容、確認先、判断予定を記録します。差分が複数ある場合も、同じ項目で並べると、工事範囲への影響を見比べやすくなります。差分を「現地で確認」とだけ残すのではなく、撤去・存置・確認中のどれに関係するかを示します。

未確認事項には、資料がない、利用部門の判断を待っている、所管窓口へ確認が必要などの理由を記録します。理由と確認先があれば、担当者が変わっても同じ質問を繰り返すことを減らせます。比較条件へ反映する項目と、着工前までに決める項目を分けることも、調査後の重要な整理です。

現地へ持ち込む資料は、法人の解体前に必要な調査一覧と照らして不足を確認します。解体工事の施工範囲を確認する方法も参照し、差分を範囲表へ記録します。

現況との差分と確認先を一行ずつ記録する一覧表の図解
現況との差分と確認先を一行ずつ記録する一覧表の図解

社内判断が必要な項目を分ける

社内判断が必要な項目には、残す設備、搬出時期、土地利用、引渡し条件、完了時に受け取る資料などがあります。現地調査の参加者が決裁者ではないときは、判断を求める内容と判断期限を整理して渡します。調査の記録と決裁の記録を分けることで、現地で確認した事実と、社内で選んだ条件を区別できます。

着工前には、未確認項目がどこに残っているかを再確認します。調査済みの資料、届出に関する確認、範囲の変更、周辺対応の確認先を同じ案件記録で見直すと、着工可否を判断する前提をそろえられます。手続の義務者と期限は、解体工事の届出一覧を参照して整理してください。

現地調査の記録から社内判断項目へ渡すフロー図
現地調査の記録から社内判断項目へ渡すフロー図

確認記録を引き継ぐ

確認内容を一覧にする

確認記録には、資料名だけでなく、どの対象と照らしたか、確認した日、確認先、判断を終えた担当を残します。資料を受け取った時点と内容を確認した時点が異なる場合は、二つの日を分け、確認に用いた資料の保管先と版も併記します。

対象が建物、設備、外構、地中などにまたがる場合は、範囲表のどの行を確認したかも記録します。確認済みという印だけで管理すると、何を根拠にしたか、どの資料が未確認かを後から確認しにくくなります。

変更時の経過を残す

対象や工程に変更があった場合は、変更前の記録を消さず、差分、変更日、影響する確認項目、確認先を追加します。説明を受けた日と社内で判断した日を分けておくと、施工側の確認事項と発注側の判断を混同せずに済みます。

契約上の相手、施工側の確認先、所管窓口、社内の判断者が異なる場合は、役割を同じ欄にまとめません。誰が実務を担うかと、発注者が資料を確認する範囲を区別し、未確認事項には判断予定を付けます。

完了時の照合につなぐ

担当者の交代時には、未確認事項、確認先、判断予定、資料の保管先を引き継ぎます。口頭の連絡だけに頼らず、範囲表、工程表、条件表のどの資料を更新したかを案件記録に残します。

完了時には、当初の条件、工事中の変更、受領資料を照らし、どの項目を確認したかを記録します。必要な判断が残るときは確定したように扱わず、確認先と次の確認時点を明記します。

まとめ

現地調査では、図面と現況の差分を対象別に記録し、未確認事項と社内判断を分けることが重要です。記事一覧、発注前の進め方、解体工事の届出一覧と照らし、調査後の記録を比較条件と着工判断へつなげてください。

よくある質問

Q. 現地調査には誰が参加しますか
発注担当に加え、施設管理、設備の利用部門、土地や不動産を管理する担当など、判断が必要な対象に関わる人を整理します。全員が現地へ行けないときは、図面、確認したい対象、判断が必要な項目を先に共有し、調査後の記録を渡す相手を決めます。
Q. 図面がない場合はどうしますか
図面がないことを記録し、現地で確認する対象、写真の位置、確認先を残します。過去の資料や設備台帳があれば、現況との差を探す情報として使います。未確認の対象は、撤去・存置を決めず、誰がいつ確認するかを案件記録に入れます。
Q. 調査済みの資料はいつ共有しますか
現地調査の前に、資料名、確認日、どの対象に関する資料かを一覧にして共有します。調査後に差分が見つかったときは、資料と現況のどちらに関係するかを追記します。石綿や土地に関する詳細な判断は、施工側、所管窓口、専門家へ確認し、発注側では説明を受けた内容と確認日を残します。

出典

本記事の出典は に内容を確認しています。

  1. 1.
    大気汚染防止法(laws.e-gov.go.jp)
  2. 2.
    土壌汚染対策法(laws.e-gov.go.jp)