選び方・比較

解体工事の施工範囲を確認する方法|残すものと撤去するものの整理

依
依田尚人

著者・監修 ・ YDAIコンサルティング株式会社 代表

8分
目次

解体工事の比較で条件がずれる大きな原因は、撤去するものだけを伝え、残すものや未確認の対象を別の資料にしてしまうことです。建物本体、設備、外構、地中、残置物、隣接地との境界は、同じ「解体範囲」でも確認先が異なります。発注者は対象別の記録を作り、撤去・存置・未確認を並べることで、現地確認と見積比較の前提をそろえられます。

建物・設備・外構・地中を分けた解体範囲の全体図
建物・設備・外構・地中を分けた解体範囲の全体図

施工範囲を対象別に分ける

施工範囲は、建物本体の有無だけで決まりません。屋根や外壁のような建物の構成要素、受変電設備や配管などの設備、フェンスや舗装などの外構、基礎や杭のような地中の対象を分けて記録します。対象をまとめて「一式」と表すと、誰が現況を確認するか、どの資料と照らすかが曖昧になりやすいためです。

対象撤去・存置の記録確認する資料社内の判断者
建物本体全部撤去・一部存置・未確認図面、現況写真、施設情報施設管理・不動産管理
設備撤去・切離し・使用継続設備台帳、配線図、契約情報設備担当・利用部門
外構と地中撤去・残置・確認待ち配置図、土地資料、現地記録土地管理・工事担当
残置物搬出対象・保管対象・確認待ち在庫記録、現地写真利用部門・総務

建物本体と付属物を分ける

建物本体の範囲を確認するときは、付属物を建物と同じ扱いにしないことが必要です。例えば、屋上の設備、倉庫に付属する棚、外壁に設けられた看板、屋根の一部などは、図面上の記載と現況が一致しないことがあります。発注者は、撤去する対象を列挙するだけでなく、存置する対象と確認中の対象を同じ表に置きます。

図面に記載があっても、改修や設備更新によって現況が変わっていることがあります。現地で見つけた差分は、口頭で伝えて終わりにせず、写真、位置、確認先を残します。差分の判断を後へ回すときも、比較対象に含める範囲か、別途の社内判断が必要な範囲かを明確にします。

建物本体と波形スレート屋根などの付属物を分ける線画
建物本体と波形スレート屋根などの付属物を分ける線画

設備とインフラの確認先を分ける

設備には、建物の解体と同時に撤去するもの、利用停止の時期を調整するもの、他の施設へ引き継ぐものがあります。空調、受電設備、給排水、通信、警備設備などを一つの「設備」欄にまとめると、使用継続の条件が見えにくくなります。設備ごとに、現在の利用部門、停止の判断者、図面と現況の差、切離しの確認先を記録します。

インフラに関する情報は、工事範囲そのものではなく、工事を始める前の確認事項になることもあります。発注側の記録では、撤去対象と利用を続ける対象を分け、判断が済んでいないものを「対象外」と決めつけません。未確認の設備があることを共有しておくと、後の工程で範囲を修正するときにも理由をたどれます。

残す対象を明確にする

残すものは、撤去しないものの一覧ではなく、工事中に保護や確認が必要になる対象です。残置物、存置設備、境界に近い構造物、利用を続ける土地の部分などは、それぞれ確認する資料と判断者が異なります。残す理由と確認時点を記録し、撤去対象と同じ資料で共有します。

残置物と存置設備を混同しない

残置物は、建物の中や敷地内にある物品で、搬出、保管、処分の判断が必要になる対象です。存置設備は、建物や敷地に設置され、解体後も残すことを決めた設備や構造物を指します。二つを同じ欄に置くと、誰が持ち出すかという確認と、工事で傷つけないための確認が混ざります。

発注者は、残置物については利用部門や管理者と保管・搬出の方針を確認し、存置設備については位置、利用予定、保護が必要な理由を記録します。工事の対象外であることだけでなく、工事と接する場所にあるかを示すことで、現地確認で見落としにくくなります。

残置物と存置設備を別カードで記録する解体前の確認図
残置物と存置設備を別カードで記録する解体前の確認図

土地・隣接地の条件を記録する

土地の条件には、敷地境界、隣接地に近い構造物、搬出経路、基礎や杭の扱い、解体後の利用予定などがあります。建物の図面だけでは分からない情報もあるため、配置図と現地記録を照らします。隣接地に関する確認は、評価や責任の判断ではなく、工事範囲と接する条件を記録するために行います。

基礎コンクリートや杭の扱いをまだ決められないときは、未確認の理由、確認先、判断期限を残します。解体後に土地をどう使うかによって、残す対象や確認する資料が変わるためです。土地側の条件を建物の撤去範囲とは別の行に置くと、担当者の引継ぎでも検討状況を共有しやすくなります。

現地で確認する順番

現地確認では、図面を見てから現況を確認し、差分を記録して判断先へ渡す流れをつくります。現地でその場の結論を出すことより、どの対象に差分があり、誰が判断するかを残すことが重要です。確認した内容を比較条件へ反映する前に、未確認項目を再確認します。

図面と現況を照らして差分を残す

図面上の対象を一つずつ現地で探し、見つからないもの、図面にないもの、位置や状態が異なるものを記録します。差分には、写真だけでなく、対象名、位置、撤去・存置の仮の区分、確認先を付けます。記録の粒度をそろえると、現地確認に参加していない担当者にも判断が必要な箇所を伝えられます。

現況の差分が見つかったときに、発注側で施工方法まで決める必要はありません。範囲を判断するための情報として残し、どの資料と照らすか、誰が最終判断するかを整理します。調査済みの資料がある場合も、現況との差が範囲や日程に関係するかを確認します。

現地で見つかった差分は、法人の解体前に必要な調査一覧で整理する資料と合わせて確認します。解体工事の付帯工事費用も参照し、範囲に関わる条件を見積比較へ反映します。

図面と現況写真の差分に確認先を付ける現地調査の図解
図面と現況写真の差分に確認先を付ける現地調査の図解

判断が必要な項目を比較条件から外さない

比較前に決められない項目があるときは、見積の対象から外すのではなく、未確認項目として条件表へ残します。例えば、撤去か存置かが未決の設備、地中の状況、残置物の搬出時期などは、確認予定日と判断者を明記します。発注候補へ伝える条件と社内で決める条件を分けることで、同じ情報が異なる前提で扱われることを防げます。

範囲の整理と費用の比較は別の作業ですが、範囲が不明確なままでは比較の根拠も共有しにくくなります。費用の見方は解体工事の費用記事を参照し、発注準備では対象ごとの記録と未確認事項の整理を優先します。

撤去・存置・未確認を同じ条件表に残す比較前の確認図
撤去・存置・未確認を同じ条件表に残す比較前の確認図

確認記録を引き継ぐ

確認内容を一覧にする

確認記録には、資料名だけでなく、どの対象と照らしたか、確認した日、確認先、判断を終えた担当を残します。資料を受け取った時点と内容を確認した時点が異なる場合は、二つの日を分け、確認に用いた資料の保管先と版も併記します。

対象が建物、設備、外構、地中などにまたがる場合は、範囲表のどの行を確認したかも記録します。確認済みという印だけで管理すると、何を根拠にしたか、どの資料が未確認かを後から確認しにくくなります。

変更時の経過を残す

対象や工程に変更があった場合は、変更前の記録を消さず、差分、変更日、影響する確認項目、確認先を追加します。説明を受けた日と社内で判断した日を分けておくと、施工側の確認事項と発注側の判断を混同せずに済みます。

契約上の相手、施工側の確認先、所管窓口、社内の判断者が異なる場合は、役割を同じ欄にまとめません。誰が実務を担うかと、発注者が資料を確認する範囲を区別し、未確認事項には判断予定を付けます。

完了時の照合につなぐ

担当者の交代時には、未確認事項、確認先、判断予定、資料の保管先を引き継ぎます。口頭の連絡だけに頼らず、範囲表、工程表、条件表のどの資料を更新したかを案件記録に残します。

完了時には、当初の条件、工事中の変更、受領資料を照らし、どの項目を確認したかを記録します。必要な判断が残るときは確定したように扱わず、確認先と次の確認時点を明記します。

まとめ

施工範囲は、撤去する対象だけでなく、残す対象と未確認の対象を同じ表に並べて確認します。記事一覧、発注前の進め方、費用の比較方法を確認し、図面と現況の差分、判断者、確認期限を案件ごとに整理してください。

よくある質問

Q. 施工範囲はいつ確定すればよいですか
比較に入る前に、建物、設備、外構、地中、残置物の区分と、撤去・存置・未確認の状態を整理します。現地確認で差分が見つかることもあるため、最初の記録を固定せず、判断日と確認先を付けて更新します。着工前には、未確認の項目が工事範囲へどう影響するかを確認します。
Q. 残す設備はどのように伝えますか
設備名だけでなく、位置、利用を続ける理由、確認する担当者、保護が必要になる可能性を記録します。残置物と存置設備は分け、前者は搬出や保管の確認、後者は工事範囲と接する条件の確認として扱います。図面と現況に差があるときは、写真と確認先も同じ案件記録へ残します。
Q. 図面と現況が違う場合はどうしますか
どちらかをすぐに正しいと決めず、差分として残します。対象名、位置、確認した日、確認先、撤去・存置への影響を記録し、社内で判断する項目と施工側へ確認する項目を分けます。差分を比較条件から外さず、判断予定を共有すると、後の変更理由を説明しやすくなります。

出典

本記事の出典は に内容を確認しています。

  1. 1.