選び方・比較

法人の解体工事で発注前に確認すること|漏れを防ぐチェックリスト

依
依田尚人

著者・監修 ・ YDAIコンサルティング株式会社 代表

9分
目次

解体工事の発注前には、目的、範囲、調査、手続、工程、完了確認を同じ順序で見直します。担当者が変わったり、複数の部署が関わったりする案件では、確認済みの情報と未確認の情報が混ざると、比較条件や着工判断に抜けが出ます。法人の発注者は、工事内容を細かく暗記するより、確認項目を五つの区分に分け、判断者と確認時点を記録する方法が有効です。

目的・範囲・調査・手続・完了確認を並べた発注前チェックリスト
目的・範囲・調査・手続・完了確認を並べた発注前チェックリスト

発注前チェックの全体像

チェックリストは、何かを選ぶための採点表ではありません。工事を始める前に、誰が決める項目か、誰から情報を受け取る項目か、いつ確認する項目かを区別する記録です。目的、範囲、調査、手続、完了確認の五つに分けると、資料がない項目や社内判断が必要な項目も残せます。

確認区分主な確認内容確認する時点記録する担当
目的引渡し条件、利用予定、判断者比較の前発注担当・決裁者
範囲建物、設備、外構、地中、残す対象現地確認の前後施設管理・利用部門
調査建物資料、土地資料、説明を受ける資料工程を決める前発注担当・確認先
手続義務者、期限、提出先の確認着工判断の前発注担当・施工側
完了確認受領資料、保管先、照合する条件契約前から完了時受領担当・保管担当

目的と完了条件を確認する

最初に確認するのは、解体を何のために行い、どの状態で引渡しを受けたいかです。建替え、移転、土地利用の変更、設備更新など、目的が異なれば残す対象や判断期限も変わります。目的を案件記録の最初に書き、引渡し時に確認する状態を言葉にすると、後の範囲整理で判断の基準がぶれにくくなります。

完了条件には、工事が終わった日だけでなく、受け取る資料、社内の保管先、確認を終える担当者を含めます。完了時に何を照らすかを先に決めると、契約前に確認する説明や資料も整理しやすくなります。目的と完了条件を同じ欄に置けば、工程だけが先に進んで引渡し条件が曖昧になることを防げます。

引渡し条件と完了資料を最初に決める法人担当者の図解
引渡し条件と完了資料を最初に決める法人担当者の図解

範囲と対象外を確認する

範囲は、建物本体、設備、外構、地中、残置物などに分けます。撤去する対象だけでなく、残す設備、利用を続ける配管、隣接地に近い構造物などを同じ記録に置くと、対象外が後から加わることを減らせます。図面と現況の差があるときは、差分の位置と確認先を記録し、誰が撤去・存置を判断するかを分けます。

未確認の項目は、空欄ではなく「確認先」と「判断予定日」を付けます。例えば、地中の基礎コンクリートや杭の扱いを決めていないなら、比較条件に関係するか、着工前に判断するかを記録します。範囲の決定と費用の比較を混ぜず、まず対象別の前提を共有します。

調査と手続の確認

調査と手続は、工事の予定に影響することがあるため、範囲の確認と並行して記録します。ただし、調査の説明を受ける主体、届出を行う主体、施工を行う主体は制度ごとに異なります。発注者は、誰が手続を担うかを一括りにせず、対象、義務者、期限、提出先を分けて確認します。

石綿・土壌の確認状況を記録する

石綿に関する確認は建物側、土壌に関する確認は土地側の論点です。資料の有無、調査結果を確認する日、工事範囲へ影響する可能性がある事項を別欄に置きます。石綿については、施工側から受ける説明や結果を確認し、土壌については、基礎撤去や掘削の予定、面積、土地の条件を整理します。

二つの確認を同じ「調査済み」という言葉で終わらせると、結果を受け取る日や確認先が見えません。資料が不足するときは、資料名、確認先、回答を待つ日を残します。詳しい制度や対象の判定は、解体工事の届出一覧、所管窓口、専門家へ確認し、発注側の表には確認状況を記録します。

石綿の建物資料と土壌の土地資料を分けて管理する確認図
石綿の建物資料と土壌の土地資料を分けて管理する確認図

届出の義務者と期限を分ける

建設リサイクル法の対象建設工事の届出は、発注者または自主施工者が工事に着手する日の7日前までに都道府県知事へ届け出る手続です。根拠は同法第10条第1項で、現行法施行日は2025-06-01、改正公布日は2022-06-17、確認日は2026-09-05です。e-Govの建設リサイクル法で確認できます。

大気汚染防止法では、事前調査と発注者への書面説明は元請業者が行い、届出対象特定工事の届出は発注者または自主施工者が行います。根拠は第18条の15第1項と第18条の17第1項で、現行版の施行日と改正公布日は2026-07-01、確認日は2026-09-05です。手続名、義務者、期限、提出先を同じ行に書き、説明を受けたことだけで届出の確認が済んだと考えないようにします。

着工と完了の確認

着工前の確認では、予定どおりに工事を始められるかだけでなく、未確認項目がどこに残っているかを見ます。完了時の確認も、工事後に初めて考えるのではなく、契約前から受け取る資料と保管先を決めます。着工の判断と完了資料の確認をつなぐことで、担当者間の引継ぎがしやすくなります。

周辺対応と工程の確認先を決める

周辺への対応は、工事の影響が想定される時点と、問い合わせがあったときの確認先を整理します。施工場所の条件、搬出経路、工程の変更があり得る箇所を記録し、社内の窓口と施工側の確認先を分けます。法定の届出と周辺対応は同じものではないため、届出の義務者と連絡先を一つの欄で管理しません。

工程表には、調査結果を確認する日、範囲を決める日、届出の確認をする日、着工可否を判断する日を並べます。予定に変更が生じたら、変更日と影響する確認項目を記録します。判断の根拠が案件記録に残っていれば、別の担当者が内容を確認する際にも、どの確認が終わっているかを把握できます。

発注準備の全体像は、法人が解体工事を発注する流れで順に確認できます。解体工事の施工範囲を確認する方法も参照し、範囲の判断を確認項目に加えます。

調査結果・着工判断・周辺対応の確認先をつなぐ工程表の図解
調査結果・着工判断・周辺対応の確認先をつなぐ工程表の図解

完了時に受け取る資料を決める

完了時には、発注時に決めた範囲、変更を確認した内容、受領する資料を照らします。資料を受け取る担当、保管する場所、社内で確認を終える担当を決めておくと、工事終了の連絡だけで案件を閉じることを避けられます。工事範囲に変更があった場合も、当初の記録と変更の記録を同じ案件にまとめます。

受領資料の名称を並べるだけでなく、どの条件と照らすかを書きます。調査結果、契約前の説明、完了報告などは、受け取る時点が異なります。発注前のチェックリストに保管先と受領担当を入れることで、完了後の確認漏れを減らし、案件の記録を次の土地利用や建替えの検討へ渡しやすくなります。

完了報告と案件記録を照らして保管先へ渡す発注者の図解
完了報告と案件記録を照らして保管先へ渡す発注者の図解

確認記録を引き継ぐ

確認内容を一覧にする

確認記録には、資料名だけでなく、どの対象と照らしたか、確認した日、確認先、判断を終えた担当を残します。資料を受け取った時点と内容を確認した時点が異なる場合は、二つの日を分け、確認に用いた資料の保管先と版も併記します。

対象が建物、設備、外構、地中などにまたがる場合は、範囲表のどの行を確認したかも記録します。確認済みという印だけで管理すると、何を根拠にしたか、どの資料が未確認かを後から確認しにくくなります。

変更時の経過を残す

対象や工程に変更があった場合は、変更前の記録を消さず、差分、変更日、影響する確認項目、確認先を追加します。説明を受けた日と社内で判断した日を分けておくと、施工側の確認事項と発注側の判断を混同せずに済みます。

契約上の相手、施工側の確認先、所管窓口、社内の判断者が異なる場合は、役割を同じ欄にまとめません。誰が実務を担うかと、発注者が資料を確認する範囲を区別し、未確認事項には判断予定を付けます。

完了時の照合につなぐ

担当者の交代時には、未確認事項、確認先、判断予定、資料の保管先を引き継ぎます。口頭の連絡だけに頼らず、範囲表、工程表、条件表のどの資料を更新したかを案件記録に残します。

完了時には、当初の条件、工事中の変更、受領資料を照らし、どの項目を確認したかを記録します。必要な判断が残るときは確定したように扱わず、確認先と次の確認時点を明記します。

まとめ

発注前の確認は、目的、範囲、調査、手続、完了確認の五つに分け、未確認項目にも確認先と判断予定を残すことが要点です。記事一覧、発注前の進め方、解体工事の届出一覧を参照し、自社の案件記録に担当者と確認時点を加えてください。

よくある質問

Q. チェックリストはいつ使いますか
発注の検討を始めるときに目的と範囲を整理し、現地確認、比較、着工判断、完了確認の各段階で更新します。最初にすべてを確定するための表ではなく、未確認項目の確認先と判断予定を残す記録として使います。担当者が変わる案件では、更新日と確認した担当も記録します。
Q. 調査が未完了でも比較できますか
比較の前に、調査済みの資料と未確認の項目を分けます。未確認の項目が工事範囲や工程に関係する可能性があるときは、確認先と結果を受け取る予定日を条件表へ残します。資料がないことを対象外と決めず、どの時点で判断するかを社内と施工側で共有します。
Q. 届出の担当者はどう確認しますか
手続名、義務者、期限、提出先を四つの欄に分けます。発注者が確認する届出、元請業者から説明を受ける事項、施工者が確認する事項は同じではありません。解体工事の届出一覧を参照し、工事内容に応じた対象の確認は所管窓口や施工側へ行います。

出典

本記事の出典は に内容を確認しています。

  1. 1.
  2. 2.
    大気汚染防止法(laws.e-gov.go.jp)